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10-11シーズンの自選10公演 ~ 前半期の凶作飢饉と後半期の代役地獄 [その他オペラ関連]

夏休みの暇つぶしとして恒例の旧盆を境界としたオペラ・シーズンの総括として昨楽季のまとめ作業を実行。特徴は次の4点となって、1.ほぼ中間点での11世紀半ぶりの発生と聞く天災と世界史上で最悪水準と言う人災による災害当初の余震頻発期での全公演喪失と現在も継続の代役投入での内容低下、2.にもかかわらず震災前は質的に充実と思える公演は少ない一方で記憶に残る上演は後半期に集中して震災後の幻に終わった演目も考慮すると「前低後高」とも言える偏在、3.このためにトップ10の抽出では何度かの熟考を経ても例年と同等な順位付けが不能となって2つの順位で「該当なし」との判断、4.先年来の景気低迷という先進国共通の要因に新たに放射能禍という国内固有の要素が加わって来楽季以降の来日引越公演は質量ともに見通しは暗い上に頼みの新国立劇場は先々代の芸術監督以来の独墺流とも想像の演目構成と演奏家起用に加えて藤原歌劇団の退潮によってイタオペ派の国内組には耐忍の時代が継続。全体では映画の水増しが増加して昨楽季より21回増の124回で、会場順では例年どおり新国立劇場18回(貸し公演含む)、東京文化会館9回が突出して以下、不本意な映像関連が続いて新宿ピカデリーと神保町シアターが各7回、フィルムセンター5回の後に、NHKホール、ネクサスホール、国際フォーラム、オカモトヤビル(第2含む)が各4回。このうち、オペラ公演は演奏会形式、抜粋公演、映像上映を含めて39公演45回に止まり、昨楽季比で4演目5回の公演中止も一因して9回減少の低調。全曲公演の中から上演の全体内容に印象度を加味した自選のトップ10は次のとおり。(画像は日米関係の因縁から震災に翻弄されながら上演3演目が上位と最低の何れにも入選のメトロポリタン歌劇場来日公演の会場で配布の絵葉大の販促カード)
metcard.jpg 1.「コジ・ファン・トゥッテ」6月5日・新国立劇場
 5回公演の3日目と楽日に参戦して敢えて初見の前者を選択。第1幕の昼の喜劇と第2幕の夜の悲劇の見事な対比によって読替演出として出色の主催劇場史に残る名演出。
 「短夜や恋の生命に重なりぬ」
 2.「ルチア」6月16日・メトロポリタン歌劇場
 4回公演の3日目と楽日に参戦して前者を選択。混乱の代役攻勢の中で2回のみの当初配役の初日は外題役の名人芸に加えて鬼気迫る壮絶な伴奏が鮮烈。
 「舌を刺す刺激に涼味缶ビール」
 3.「ボエーム」6月19日・メトロポリタン歌劇場
 来日楽日に参戦。現地の昼夜興行の疑似体験との酔狂心で臨むも歴史的名演出の中で指揮者の耽美的な音楽運びに応えた独唱陣の情緒連綿の歌唱にプッチーニの醍醐味を満喫。
 「夕焼けてセピア色して風止まる」
 4.該当なし
 5.「トリスタンとイゾルデ」1月10日・新国立劇場
 5回公演の2日目と楽日に参戦して後者を選択。先代芸術監督の悲願演目として満を持した陣容によって異常な前景気も含めて1位公演と同様に主催劇場史に残る興行。
 「嫁凄む夫婦萬歳威勢良し」
 6.該当なし
 7.「結婚手形&ブルスキーノ氏」12月17日・サントリーホール
 ピアノ伴奏の小劇場上演の上に進行役付きながら両作の女主人公役を筆頭に主催劇場付置研修所の同窓公演での溌剌の歌唱と演技によってファルサの魅力を縦横に放出。
 「顔見勢の跳ねて心地の温かさ」
 8.「ルチア」3月6日・藤原歌劇団
 楽日に参戦。国内の「ベルカントの守護者」とも言うべき主催団体の情熱と地力が外題役の若手の健闘をはじめ公演全体から発散の上に新進邦人指揮者の伴奏も好感。
 「啓蟄の上野の山の膨らみぬ」 
 9.「カリスト」12月4日・東京室内歌劇場
 初日に参戦。門外漢ながら中劇場での古楽器楽団の名伴奏を得てバロック作品の理想的な公演形態の中で独唱陣の好演も加わって演出を除いて予想外に興味深く堪能。
 「古の煌めき今に寒北斗」
10.「蝶々夫人」6月18日・新国立劇場
 楽日に参戦。プッチーニ作品には不可欠な演劇的かつ音楽的緩急に卓越の指揮者の音楽運びに傾聴して再聴不可能な楽日選択を大いに後悔。
 「長崎の丘碧々と皐月波」
番外.「道化師」5月22日・トウキョウ・モーツァルトプレイヤーズ
 公営劇場が提携の全2回に参戦して本拠地での初回を選択。室内オケの演奏会形式での短編ながらヴェリズモの魅力を引き出した伴奏の上にベテラン歌手の奮闘に傾聴。
以上の順位付けから偶然ながら震災後の全公演喪失も影響して「該当なし」を区切りとして1位から3位・5位・7位から10位の優・良・可的な色分け。続いて公演中に拝聴への苦行を強制のワースト3は次のとおり。
 1.「ドン・カルロ」6月15日・メトロポリタン歌劇場
 東京での3回公演の初目と中日に参戦して後者を選択。代役ソプラノの不調または非力に加えて代役テノールの持久力減退によってヴェルディ畢生の大作は見事に瓦解。
 「祖廟にも涙ひとすじ梅雨湿り」 
2.「カンピエッロ」10月10日・東京藝術大学音楽学部
 楽日に参戦。舞台上で習練の成果を披露の歌手陣ではなくイタリア的な軽快感と場面情景描写に乏しい非歌劇的な伴奏によって音楽的感興は最後まで皆無。  
 「ベネチアの広場を隔つ霧襖」
 3.該当なし
*主な参戦予定の中止は、フィレンツェ市立劇場「運命の力」、新国立劇場「マノン・レスコー」(2回)、東京・春・音楽祭「ローエングリン」、マリボール劇場「運命の力」。
*主な不参戦は、外題役歌手に関心なく英国王立歌劇場「マノン」「椿姫」、同様にマリインスキー劇場「トゥーランドット」、演目の魅力にやや呼応できずに同「影のない女」、独唱陣と演目に魅力なく新国立劇場「椿姫」。
今楽季も中間点での宿命的事変を甘受しつつペラゴロ生活を享受させてくれた芸術家、興行関係者、友人らに感謝しながら生涯で唯一度と思える「東京ベルカント祭」で幕開けの後は期待感の乏しい新楽季を迎えます。
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